科学の名のもとに。自らの体を実験台に使用した驚異的9人の科学者たち

fdd5973b
0_e33

科学には常にリスクがつきまとう。研究に没頭するあまり家族や友人から見捨てられるリスクもあれば、危険な化学物質や病原菌によって命を落とすリスクもある。期待される成果に見合ったリスクもあるだろう。だが、中には「おいおい正気の沙汰かよ!」と突っ込みをいれたくなるくらいの無茶をした科学者も存在する。

ここではそんな偉大でちょっとクレージーな9人の科学者たちを見ていこう。

9. 自らを鉤虫に感染させ体内の様子を観察
ジェームズ・ローガン(イギリス)

1_e28

2012年、イギリス、ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディシンの病理学者ジェームズ・ローガン博士は、人々が思わず気色悪さで呻くような実験を行った。鉤虫に自ら感染し、胃カメラを飲み込むとその様子を観察したのだ。鉤虫は糞の中に潜んでおり、汚染された土壌から人間や動物に感染する。しかし、ローガン博士は科学のために、あえて自らの皮膚に注射したのである。

どうやらこの行為は彼の気まぐれなどではなく、食品アレルギーと鉤虫との関係を理解し、ついでに鉤虫が皮膚から体内に到達するその様子を明らかにするために行われたようだ。それまでの研究からは、鉤虫が食品アレルギーを軽減させることが判明しており、奇しくも博士自身、小麦アレルギーだった。

鉤虫が成長すると、やがてローガン博士の腸を傷つけ、炎症が起こり始めた。胃の痛みを感じたようだが、パンやピザをアレルギー症状なしに食べれるようにはなったという。なお、実験後はきちんと駆除薬を飲んで、寄生虫を追い出したそうだ。

8. 体中すべてをミツバチに刺させて痛みの度合いを数値化
マイケル・スミス(アメリカ)

2_e27

2015年、アメリカ、コーネル大学のマイケル・スミスは、自らを実験台にした苦痛を伴う”なんでそんなことを”実験によってイグノーベル賞を受賞した。性器を含む自分の体の様々な部位をミツバチに刺させて、その痛みの度合いを調査したのだ。その狂気の実験は数週間も行われたという。

200回も刺された末に、刺されると最も痛い場所はペニス、鼻の穴、上唇の3ヶ所であることが判明した。その中でも特に痛いのは、大方の予想に反して、鼻の穴だったそうで、「絶対にハチに刺されたくない場所」とスミス氏はコメントしている。

イグノーベル賞はノーベル賞のパロディで、「人を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して贈られる。そして受賞者に賞を授けるのはノーベル賞受賞者である。スミス氏はこの受賞によって賞金10兆ジンバブエドルを獲得した。が、残念なことに、その価値は数百円程度でしかない。

ハチに刺されると一番痛いのはどこ?学生が体を張って自ら検証した「全25部位痛みランク表」

7. 茹でたトガリネズミを飲み込む
ブライアン・クランダルとピーター・スタール(アメリカ)

3_e25

アメリカ、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のブライアン・クランダルとピーター・スタールの両氏が『ジャーナル・オブ・アーキオロジカル・サイエンス』誌で発表した研究、それは彼らのうち1人が茹でたトガリネズミを飲み込むというもの。このイカれた実験の犠牲となったブラリナトガリネズミは、大学の付近で捕獲したもので、尻尾を除く体長は90mmほどだったそうだ。

クランダル氏とスタール氏は、ネズミの皮を剥ぎ、内臓を取り除き、2分間茹でた後でこれを頂いたという。実験の目的は、小型食虫動物の骨が人間の消化器系に与える影響を知ることである。

実験から3日後、被験体の大便を採取し、これを分析した。その結果は驚くべきものだった。ネズミを文字通り丸呑みしたのにもかかわらず、骨はほとんど発見されなかったのだ。両氏は、発掘された動物の骨とそれを食べた人間との関係を理解する上で重要な考古学的発見だとしている。なお、残念ながら、両氏のうちいずれが実践したのか、彼らは口を閉ざしたままである。

6. 20万回以上トコジラミに噛まれる
レジーネ・グリース(カナダ)

4_e23

世界中の大都市でトコジラミが問題化している。しかし、少々変わり者の女性科学者のおかげで、この害虫との数世紀にもわたる戦いに終止符が打たれるかもしれない。カナダ、サイモンフレーザー大学のレジーネ・グリース氏が、フェロモンを利用してトコジラミをおびき寄せるトラップを開発したからだ。だが、その開発には大きな犠牲が払われた。彼女は毎週土曜日、袖をまくり、数千匹ものトコジラミに腕を噛ませなければならなかったのだ。

当初、グリース氏らは付近の養鶏場からニワトリの血液をもらい、これをトコジラミに与えていた。しかし、ニワトリには薬品が投与されており、トコジラミは次々と命を落としていったという。そこでモルモットを試してみたが、そのモフモフの毛皮にトコジラミはうまくへばりつくことができなかった。そのため、餌を与えるたびにモルモットを落ち着かせ、毛を刈らなければならなかった。最後はグリース氏も諦め、自らの体を提供することにしたというわけだ。

グリース氏によれば、トコジラミに噛まれる感覚は蚊に刺された時のそれに似ているそうだ。この実験で彼女は少なくとも20万回はトコジラミに噛まれている。なお、別の実験でも彼女は蚊に自らの血液を捧げたという。

5. 350万年前の細菌を腕に注射
アナトリ・ブロウシュコフ(ロシア)

5_e21

不老不死の探求は終わった。少なくとも、ロシア、モスクワ大学のアナトリ・ブロウシュコフ博士はそう主張している。永遠の命の鍵を握るのは、350万年前の細菌だ。その理論を確かめるべく、ブロウシュコフ博士は自らを実験台として、細菌を体内に注射した。彼によれば、それ以来「以前よりも長く働ける」ようになり、「過去2年間、風邪ひとつひかない」という。

バチルスFという細菌を自分の体で試す前に、博士はキイロショウジョウバエとマウスで実験を行っている。これが首尾よくいったことを受けて、人体実験を行う決意をした博士だが、実は他にも根拠があった。バチルスFは永久凍土の中に閉じ込められているが、その雪解け水を飲んで暮らすヤクート人は長寿で知られている。その秘訣がバチルスFというのが博士の見解だ。

科学者がまた体を張った。350万年前の細菌を自らに注射し病気知らずの屈強な体を手に入れたと主張(ロシア)

4. HIVワクチンを自らに接種
プラディープ・セス(インド)

6_e19

80年代とは状況が異なり、現在においてHIV感染は死刑宣告ではない。薬を飲み続ける限りは、通常の健康な人と同じように生活を送ることができる。今やどうにか付き合える慢性疾患のようになったHIVであるが、科学者はそれに満足せず、完全なる治癒方法の確立を目指している。

インド、全インド医学大学のプラディープ・セス博士もその1人だ。ワクチン開発に燃える彼は、正気の沙汰には思えない行為に出た。2003年、有望そうなHIVワクチンを自らに接種したのだ。

ワクチン接種に先立ち、猿とマウスを利用した実験が行われている。その結果は期待が持てるもので、セス博士は「人体での反応を確認するために」自らにワクチンを打った。博士の行為は科学的な好奇心と純粋に人々の命を救いたいという情熱ゆえに行われたものだが、学会からは軽率かつ非倫理的であるとして厳しい批判が浴びせられた。この実験を止めなかった同僚まで批判にさらされている。だが、幸いにもセス博士が接種したワクチンにはHIVが含まれていなかった。

3. 怒り狂って突進してくる牛を前に立ちはだかる
ホセ・デルガード(アメリカ)

7_e15

怒り狂った牛が自分めがけて突進してきたらどうするだろうか? マタドールでもない限りは、死に物狂いで逃げ出すことだろう。だがホセ・デルガード氏は違った。全力で突進してくる牛に勇敢にも立ち向かったのだ。そして生き残った。だが、なぜそんなことをしたのだろうか? もちろん科学のためだ。彼は1946~74年までイェール大学の著名な神経科学者で、動物の脳にインプラントを行ったパイオニアである。

デルガード氏は動物の神経に強い関心を抱いており、その感情や行動をコントロールしたいと考えた。そして長年にわたる実験の末、ついに “スティモシーバー”が完成する。スティモシーバーは、ペースメーカーのような装置で、受信機を通じて脳の特定の部位に電気刺激を与えることができる。それによってスイッチ一つで動物の行動や感情を操作するという代物だ。

先ほどの牛との立会いは、その効果を確かめるための実験である。彼は怒り狂って突進してくる牛を前に悠然と立ち、スイッチを入れた。その途端、牛は動きを止め、ギクシャクと離れ去っていった。

デルガード氏はこの装置が鬱や統合失調症の治療に役立つと考えていたようだが、倫理的な問題があるという批判にさらされた。結局、シティモシーバーが医療に使われることはなかった。

2. 自らの脳にインプラント
フィル・ケネディ(アメリカ)

8_e13

1990年代後半、フィル・ケネディとロイ・ベイケイの両氏は、史上初のサイボーグを開発したとして、一躍時の人になった。そのサイボーグはジョニー・レイというベトナム帰還兵で、脳卒中によって麻痺が残り、寝たきりだった人物である。ケネディ氏とベイケイ氏は、患者の脳の一次運動野に電極を埋め込み、脳を使ってPCをタイプしたり、カーソルを操作したりさせることに成功した。

しかし、これで終わりではない。ケネディ氏はさらに2014年、完全に健康で正常に機能する脳、すなわち自らの脳を使って実験することにした。アメリカでは人間の脳への移植は違法であるため、彼はブラジルにわたり、手術を行ってくれる医師を探した。手術は成功したかに見えたが、ケネディ氏は危うく心を失うところだったという。最初の数日間、話すことも、文字を読むことも、周囲の物を認識することもできなかったのだ。しかし、副作用はやがて治り、通常通りに思考できるようになった。

これに懲りる彼ではない。今度はベリーズに飛び、二度目の手術を敢行する。この時は無線送受信機とコイルを移植するよう医師に頼んだが、電極がかさばりすぎて、頭蓋骨の切開を閉じることができなかった。結局、2015年1月13日、ケネディ氏は送受信機とコイルを除去することにした。だが最初の手術で埋め込まれた電極はまだ彼の脳の中にある。

1. 名だたる毒蛇に160回以上自分の腕を噛ませる
ティム・フリーデ(アメリカ)

10_e13

ティム・フリーデという人物は蛇に対する恐怖が麻痺しているようだ。その蛇好きというか、取り憑かれぶりは命取りなほどである。過去16年で彼はブラックマンバ、ニューギニアタイパン、ガラガラヘビといった世界有数の毒蛇の毒を自らに打ってきた。フリーデ氏に気違いのレッテルを張る前に、まずその狂気の実験の崇高な目的を知った方がいい。彼の願いは、世界の危険な蛇に対する免疫を作り上げ、ワクチン開発に役立てることである。

こうした崇高な目的を持つ彼であるが、学会や医学界からは強く批判されている。彼らによれば、フリーデ氏の行為は馬鹿げており、感染症、アレルギー、臓器不全、さらには命を落とすなど、いずれは代償を支払うことになるという。

蛇に取り憑かれたフリーデ氏は今のところ健在であるが、家族には逃げられてしまった。「私も子供たちも一番どころか、二番手ですらなかったわ。いつも蛇が一番よ」とは元妻のベスの証言だ。ワクチンの完成と彼の死、どちらが先だろうか。

via:listverse・translated hiroching

出典:カラパイア
fdd5973b

この記事をみんなにお知らせ